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ライブラリ

在籍女性とスタッフたちの愛読書、映画などをご紹介いたします。

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橋の上の娘
主演ヴァネッサ・パラディ
ダニエル・オートゥイユ
監督パトリス・ルコント

 「ねえお願い。アレをして。今すぐに。」
少女が懇願するのは、セックスでもドラッグでもない。壁を背に両手を広げ恍惚の表情を浮かべる少女に、男はナイフを投げる。少女の両足の間に、あるいは青白い首をかすめ、鈍い振動と共に、ナイフは重く突き刺さる。
 中年のナイフ投げと、生きる意味を見いだせない美しい少女。二人は身体を合わせることも、接吻を交わすことすらない。しかし男がナイフを手にし、少女が的となる時、流れる空気は一変し見る者全ての心を捉えて離さない。観客は驚嘆と称賛の声を上げ、割れんばかりの拍手の中、ショーは終わりを告げる。命を輝かせる術を持たない少女に男は目覚めを与え、もう死んでしまった男に少女は再生を与えたのだ。そして少女の若さ故に、歯車は狂い始める。互いが唯一無二であることに気付くのに、何故我々はこれほどまで時間を欲しがるのだろう。 by R

毛皮のエロス
主演ニコール・キッドマン
ロバート・ダウニーJr
監督スティーヴン・シャインバーグ

 ダイアン・アーバスは、1940年~60年代に活躍しポートレイトの概念を変えたといわれる写真家である。
 彼女のファン、もしくは彼女が撮り続けた世界観に共感を覚える方でなければ、本作に特筆すべき点はないかも知れない。
 半生を描くのでなく、あくまでもイメージとして綴られる物語は矛盾が多く、展開にも無理がある。
 しかし、詩の断片の連なりのような映像世界は、理屈を通り越して十分に魅力的だ。 フリークスや性倒錯者を主な被写体とするアーバスが、レンズの向こうに見ていたものは何だったのだろう。
 彼女は「人間の殻を打ち破る最も確実な方法は性行為だ」と語ったという。言葉より身体がものいう時は、日常でも数多くある。身体とは即ち、剥き出しの心だから。
 前回と同じスティーヴン・シャインバーグ監督作品の比較としても楽しめる。 by R

アイズ・ワイド・シャット
主演トム・クルーズ
ニコール・キッドマン
監督スタンリー・キューブリック

 キューブリックの遺作にして、最高傑作と言われた作品。
トム・クルーズとニコール・キッドマン元夫婦の共演も話題になった。
 10年ほど前、はじめてこの作品を観た時に、私の中にある性的願望がうずいた。(ように感じた。)最近になって、またあの興奮を思い出したくなり、改めて鑑賞した。
 興味本位で奇妙な仮面パティーに潜入するトム・クルーズ演じる医師ハフォード。
そこで目にしたものは、仮面を身につけた人々が、性的欲望をむき出しにする姿だった。現実と非現実の境目を見失いかけるハフォード。非日常の閉ざされた空間において、あらわになる性欲。
 描写自体は、それほどエロティックとは思わないが、じわじわと主人公を追いつめていく心理描写はさすが!だと思う。
 10年前にうずいたもの。それは私の中の羞恥心と、それを刺激したいと思う強い願望だったのだと、今はわかる。by Y

セクレタリー
主演マギー・ギレンホール
ジェームズ・スペイダー
監督スティーヴン・シャインバーグ

 SMは心療内科やセラピーに似ている。
 プレイを通して意識の奥底に溜まったものを吐き出し、「向こう側」へ行くことで心と身体が浄化され、私たちは再び「こちら側」で日々の生活を送る。
 時にはそれまで知らなかった自分を見い出すことさえあり、それはまた新たな喜びとなって心の糧を生み出す。ただしそれは、真に全てを解放できる理想的なパートナーがいなければ、叶わないことだろう。
 本作の主人公リー(マギー・ギレンホール)は、その理想のパートナーに巡り会えた幸運な女性だ。グレイ(ジェームズ・スペイダー)との主従関係を通して自傷癖を克服し、同時に女として強く美しく成長してゆく彼女の姿は、潔く、清々しい。
 対して、リーに促され導かれるまで自分の性癖を受け入れられず、背を向けいじけていたグレイの姿は、半ば滑稽でもある。
 女とはつくづく、変化を味方につけ順応するのが得意な動物なのだ。by R

アタメ 私をしばって!
主演ヴィクトリア・アブリル
アントニオ・バンデラス
監督ペドロ・アルモドバル

 タイトルが「アタメ 私をしばって!」ハッとするタイトルなので、SMも盛りだくさんでアブノーマルな映画かと思いきや…。
 元ポルノ女優マリーナが精神病院から出たばかりの男リッキーに監禁されてしまう。望まざる生活を通して、なぜか愛が芽生えていくという、奇妙な物語です。
 当初期待していた「SM」とは、かなりかけ離れているのですが、楽しく見られる陽気な映画です。マリーナがおもちゃで遊ぶバスタブのシーンなども、今見てもかなり笑えます。
 ちょうど最新作が公開されるとのことなので、色彩の華やかさが私のツボにはまっている、スペインの映画監督、ペドロ・アルモドバルの作品をご紹介しました。
 これからもスタッフと女性達で不定期にSMに関連した、書籍、映画などを紹介する予定です。たまに覗いてみて下さい。
by Sakurai